外国のことばの話.html
Pozdrav! わたしです。Slackです。
つい昨日のことですが、こんな内容のツイートを見かけました。
こんな内容.png
ということで今日はこれに関係する話をしたい。真面目な話になるので苦手な人は読まなくていい……と言いたいところですが、これは知らないとそこそこの確率で盛大に地雷を踏むことになる可能性があるので全員読んでください。そもそも何故ツイ主はイヤな顔をされたか
わたしの配信に来ている人で、フィリピンの言語について詳しい人は恐らく1-2名しかいないと思うので、まずは言及されている言語についての基礎知識からざっくりと。
タガログ語(フィリピノ語)
タガログ語はフィリピンの公用語です。
厳密に言えば公用語はこのタガログ語を標準化したものであるフィリピノ語なのですが、便宜的また政治的な理由から以下ではタガログ語と表記します。
タガログ語は系統的にオーストロネシア語族フィリピン語群に属します。
つまり台湾原住民のことばや、インドネシア語、果てはマダガスカルやマオリのことばと遠い親戚関係にあります。
元々は首都マニラの属するルソン島中部の言語で、政治的中心地の言語であることから1980年代に英語と並ぶフィリピンの公用語とされました。
フィリピン国内における母語話者人口は2200万人。これは1億人前後いるフィリピンの総人口のおよそ20%にあたります。
……この時点でなんとなく察した方はいるかもしれませんが、もう少しお付き合いください。
セブアノ語
セブアノ語はフィリピン南部のセブ島やミンダナオ島などで話される言語です。
タガログ語と同じくオーストロネシア語族フィリピン語群に属しますが、タガログ語との相互理解可能性がきわめて低いため、方言ではなく別の言語として扱われています。
(オーストロネシア語族の中でも古い時代に分化したフィリピン語群では、これら二言語に限らず言語間の差が比較的大きいです)
母語話者人口は1800万人。タガログ語とほぼ同水準の母語話者人口を有しています。
何がいけなかったのか
さて、タガログ語とセブアノ語はいずれもフィリピンの中で特に話者人口が多い言語(ただし二つ合わせても総人口の半数に届きません)です。
しかしながら、前者が「フィリピンの言語」を意味する「フィリピノ語」として公用語としての地位を手にしたのに対し、ほぼ同程度の話者人口を有する後者は現在に至るまで特段地位を得ることができていません。
さて、あなたがセブアノ語の話者であったとして、もしも自分の母語がこのような状況におかれたらどう思うでしょうか。めちゃくちゃイヤですよね?
なにせ自分たちのことばと大して話者数が変わらない、かつ何を言っているのか分からないことばが、ただ首都のことばであるという理由だけで国を代表する言語とされてしまったのです。
たぶん近畿地方とかの人ならどういう感覚かなんとなく想像できるかと思います。東京圏の出身者には分からないです。
そういう理由から、セブアノ語含むほかのフィリピンの言語の話者は、このタガログ語至上主義ともいえる政策にかなり強く反発しています。
たかだか人口の20%でフィリピンの代表面するな、というわけです。当たり前ですね。
さて、そんなセブアノ語の話者に対して、元ツイ主はタガログ語で話しかけてしまいました。
想像しやすいように、日本のことばで例を出してみましょう。
たとえばあなたが京都の人だったとします。ある時、あなたの所に東京からの観光客が来たとします。
さて、この観光客はあなたを見て、――関西人相手だから「関西弁」で話そうと思ったのでしょうか――おそらくテレビで学んだであろう大阪弁で話しかけてきました。
※厳密には芸能関西弁と大阪弁はイコールではないが便宜的に大阪弁と表記
わたしは東京弁話者なので実際にイメージすることは困難なのですが、たぶんこれをやられたら京都の人的には相当イヤだと思うんですよね。
ツイ主は、もちろん悪気は無かったのですが、これに類することをやってしまったわけです。イヤな顔をされるのも仕方ないと思います。
仲がいい人相手なら優しく注意してくれるだけで済むと思いますが、初対面ならそこそこ嫌われるでしょうね。
どうすれば良かったか
では、こういう事態にならないためにはどうすればよいのでしょうか。
一番有効なのは、相手の母語が何なのか知ることです。
日本と異なり、外国ではひとつの国家の中に相互理解不可能なふたつ以上の言語があることがザラにあります。インドなどはその好例でしょう。
そういう時、もし相手の母語が分かっているのであれば、それをピンポイントで使うことでほぼ確実にトラブルを避けることができます。(それでも事故が起きる可能性はあります)
特にセブアノ語のようなマイノリティの人相手であれば、そのことによって相手からの好感度が上がるかもしれません。ちなみにわたしはそういう理由で挨拶だけでも相手のことばを使う努力をしていますが、未だに徹底できていません。
とはいえ、初対面の人に母語を聞くのはなかなか厳しいものがあります。そういう場合には、通じる言語の中でなるべく無難な言語を使うことが望ましいでしょう。
例えばフィリピンであれば、英語を使えば民族を問わずほぼ確実に意思疎通できます。
それで好感を持たれるかといえばそれほど好感は持たれないと思いますが、日本語よりは確実に通じますし、タガログ語よりもトラブルになる可能性ははるかに低いと思います。
観光地として人気の台湾なら、台湾華語(北京語)を使えばおそらく確実に通じます。
土着語である台湾語もたぶん確率8割ぐらいで有効なはずですが、たまに外省人や客家、原住民などの人に当たった時に事故が起きる可能性があります。
日本語を使うのは、確実に日本語が通じるであろう場所以外では極力やめましょう。20世紀の帝国主義者の真似をすべきではありません。日本語を使うぐらいなら英語を使うか、紙に漢字を書いて意思疎通しましょう。幸い文字が同じなのでそこそこ筆談はできるはずです。
大多数の国では、英語を使えば基本的にトラブルなく通じると思います。
そのほか中南米ではスペイン語やポルトガル語、中国(香港を除く)では普通話、西アフリカではフランス語、旧ソ連の多くではロシア語が通じます。
ただしウクライナやバルト三国ではロシア語でなく英語を使いましょう。当たり前なのでいちいち言うまでもないとは思いますが念のため。
いずれの方法を取るにしても、無用なトラブルを起こさないために重要なのは、色々な国の言語や文化、政策について知っておくことです。
この辺当たり前の話を当たり前にしているだけなのですが、これが普通に難しいですし(元ツイはそれをやろうとした結果の失敗ですし、わたしも全然上手くできていません)、そもそもやる努力すらしていない人がめちゃくちゃ多いので強く言う価値があります。
ちなみにわたしに話しかける場合は、みなさん自身の母語ないし母方言で話しかけてくれるととてもうれしいです。ぜひやってください。
というわけで、真面目な話はここまで。また次の記事でお会いしましょう。Do viděnja!
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